内容証明郵便を出すことにはメリットもありますが、デメリットもあります。

各事案に応じて、内容証明郵便を出した方が良いのか?もしくは他の手段を取った方が良いのかを考える必要があります。

 

内容証明のメリット

①通知の内容と日付を証明することができる

内容証明で通知書を送ると、どのような内容の通知を相手に送ったのかを、証明することができます。

トラブルが起きた際には、結局立証できるかどうかが大切となってきますので、この相手に確かに意思表示をしたという証拠を残すことはとても重要です。

金銭を返済して欲しいという通知にしても、普通郵便であれば、相手がその手紙を破棄又は隠蔽してしまえば、いったいどういう内容の請求をしたのかが証拠に残っておらず、そんな話は聞いていないと逃げることも可能になってきます。しかし、内容証明で発送していると、そうはいきません。同一の証明書が合計3通作成され、差出人1通、郵便局1通、受取人1通をそれぞれ保管することになっているので、「そんな通知はなかったぞ」と逃げることができなくなります。配達証明というサービス(310円必要)を使うと、配達された事実と、配達日を証明することができます。 民法の世界では、書類が到達したときというのが大切なポイントになるケースが多々あります。

よって、この配達証明書を合わせて利用することにより、令和〇年〇月〇日に間違えなく届いているという証拠になります。

このような理由から内容証明を郵送する際は、配達証明を付けることが望ましいです。

 

 

②相手方に後ろには法律家が控えており、訴訟に発展するかもしれないという心理的プレッシャーを与えることができる。

内容証明の効果はやはり、これを受け取ることによる心理的プレッシャーに他なりません。私も若いころ何度か内容証明を受け取りましたが、受け取った当初は、夜眠ることができないほど、心理的に翻弄されました。

以前は、このように内容証明が届いただけでパニックになるほどの厳つい文章でしたが、最近では調べることも可能になってきているので、昔ほどは強烈な印象はないものの、やはり受け取った方としては、後ろに法律家が控えており、きちんと対応しなければ訴訟に発展してしまうのではという、プレッシャーを与えることはできるでしょう。

また状況に応じては、法的手段にこられると、非常に都合が悪いような相手もいるはずです。そういうときは、一層有利に話を進めることができる可能性が高くなるのではないでしょうか?

 

 

内容証明のデメリット

内容証明には文字制限があります。 1行20字以内、1枚の用紙に26行以内、1枚520時以内という形式があります。

電子申請の場合は電子申請の形式に従います。

内容証明で発送する場合は、普通郵便よりも高額な郵送費用がかかります。

また、書類の同封ができず、資料などを添付できません。 そのため、内容証明の本文中に資料等の参照が必要な場合には、別便で資料等を郵送することになります。

また、内容証明を送ってしまうと、相手を刺激する可能性が高く、円満解決が望みにくくなります。

以後も良好な関係を継続したい間柄であれば、内容証明は避けるべきです。

 

 

内容証明を利用すべきケース

①債権譲渡を債務者に通知するとき

債権を譲渡(譲り渡す)場合には、原則として債務者に対し通知を送る必要がありますが、このときに確定日付ある証書というものが重要になってきます。(民法467条) 公証役場で日付のある印章を押してもらった証書などですが、一般的には内容証明郵便を使う事が一般です。 この通知の到達した日が債権の法的効力でとても大切な意味合いをもちますので、内容証明にてしっかりと通知すべきです。

 

②契約を解除するとき

当事者間の契約を解除するときは、内容証明を使ったほうが後のトラブルを防ぐために有効です。

契約の解除の効力を巡り紛争が勃発する可能性が高いからです。

賃貸借契約を解除するケースなどでは、家賃を滞納している賃貸人に対して、「滞納した家賃を1週間以内に支払わない場合は賃貸契約を解除する」といったないようを普通の郵便で送ってしまったあと、無視をされて契約解除だと訴訟になった場合、事前予告をしていた事を立証しなければならず、その時に借主がそんな手紙は受け取っていないと反論されてしまえば、それを立証することができなくなり、下手すれば敗訴なんてことにもなりかねません。無用な心配を減らすためにもこういうケースでは内容証明郵便を使ったほうが良いと考えられます。

 

③期限の利益を喪失させるとき

期限の利益とは、例えば分割払いのように、一括で払うのに猶予を与えているケースです。

猶予を与えることにより、相手は資金繰りにゆとりができて助かっているのですが、もし、分割払いの支払いが滞れば、残り残金を一括で支払えというふうに、期限の利益(分割払いの猶予)を喪失させる条件をつけることです。

このような通知は、受け取った側が普通郵便であればそんなものは受け取っていないと反論してくる可能性が十分考えられます。

このように、後々、証拠がのこらず、争いの争点になりかねない通知には内容証明郵便を使った方が賢明です。

 

④時効を中断(更新)させるとき

時効とは、債権など権利を行使できるのに、行使しないでいるとその権利が消滅してしまうことです。

民法が改正され、時効の中断という時効を止める働きのことを、時効の更新と呼ぶように改正されました。

相手側に請求することにより時効は中断(更新)するのですが、裁判上の請求(訴訟)でないと、「催告」として扱われるため、その催告の後6か月以内に裁判を行わないと、時効の中断(更新)の効力が生じません。

時効完成が間際な場合に、訴訟をスグにするには時間がかかり、その間に時効が完成しないように、裁判外の請求「催告」により一時的に時効完成の猶予を与えている状態です。

 

この裁判外での「催告」は内容証明ですべきです。

なぜなら、相手方が普通郵便等で受け取った場合に、そんなものは受け取っていないと反論した場合、時効完成を一時的に止める「催告」をしたことが立証できず、時効が完成してしまうことがあるからです。

内容証明でやってなかったばかりに、催告をした立証ができず、裁判で一発逆転敗訴で時効完成という事態にもなりかねません。

 

⑤クーリングオフをするとき

訪問販売など、一定の期間内であれば違約金を払うことなく、一方的に意思表示のみで申し込みの撤回や契約の解除をすることができます。この制度を利用するときは、原則として書面により契約の解除等の通知を行わなければなりません。

こういったときも、もし普通郵便で契約解除通知を送った場合、そんなものは受け取っていないと反論されてしまう可能性があります。

そうなれば、契約解除の意思を示したという立証が困難になり、契約の解除ができないということになります。

よって、クーリングオフの場合も、内容証明郵便ですべきです。

 

 

⑥訴訟の提起を考えているとき

訴訟前提の内容証明の役割は

1最悪訴訟も仕方ないと思っているが、できたら訴訟したくない

2訴訟するのだが、一応最後通告だけはしておこう

3訴訟する気はないが、内容証明を発出することによりプレッシャーを与え万一払ってくれたらラッキー

このようなケースがあると思います。

内容証明が届くと、相手方はこちらが本気であるという、紛争に突入したという心理的プレッシャーを感じることになります。

よって、相手側が応じてくれない場合は、本当に訴訟をするという意思がある場合は、最後通告として内容証明を利用します。

内容証明に書かれた、損害賠償や慰謝料などの請求金額を見て相手方はどのような事を考えているのか?もし無視をすれば本当に訴訟に移行し、弁護士費用や時間的負担など多大なダメージを受けることになるのではないかという恐怖を感じます。

訴訟に移行するのを防ぐために、こちらの要求に応じるか、示談に応じる可能性が高くなります。

もしろん、相手側が訴訟になっても構わないという態度をしめせば、無視される可能性もありますが、そうなったときは、訴訟を起こしていく以外に方法はなくなります。

よって、最後通告としての内容証明は、一度出して無視されたから、もう一度出すというのでは全く効果がありません。

相手に本気であるという意思を見せるためにも、訴訟前提の内容証明作成は専門家に依頼したほうが効果的です。

自分で作成し、素人っぽさが出てしまうと相手は無視をする確率があがります。

 

行政書士と弁護士のどちらに依頼するかの判断基準

行政書士

行政書士は書類作成の代行業務をしますが示談や訴訟ができません。よって、内容証明作成時に訴訟に発展しようがしまいがあまり関係はないです。しかし相手の心理を考え、脅迫等にあたらないように最大限の効果を与えるよう作成していきます。書類作成代金しか頂きませんし、成功報酬もないので安いです。 中には成功報酬を取っている行政書士事務所もありますが、示談交渉に絡んでいくと弁護士法に抵触する恐れがあるので、当事務所は成功報酬方を取っていません。

 

全部丸投げしたいのであれば、やはり弁護士

弁護士であればその案件トータルに考えるので、内容証明作成だけに留まらずその案件全体を依頼する形となり、丸投げたできて楽ではありますが、支払い報酬は高くなりがちです。相談にも料金がかかり、いざ依頼するとなると着手金という形で結構な金額が必要になるケースも多いかと思います。

もちろん行政書士の職印入りのものでも十分プレッシャーは与えることは可能と思いますが、弁護士の知名度程ではありません。

このように、同じ内容証明でも自分がその内容証明の後どうしたいのかで依頼の仕方が変わってくると思います。

行政書士は代書屋なので書類作成料金なので料金安め

弁護士はトラブルを解決する仕事ですから トータルで依頼になる可能性大で高くなるのも仕方ありません。

 

 

内容証明を利用すべきでないケース

①訴訟に持ち込みたくないとき

内容証明が弁護士から届くと訴訟に発展する可能性が上がります。なぜなら相手はこちらが弁護士をつけて戦闘モードに入っていると感じますので、相手側も弁護士に相談に行く可能性が高くなります。弁護士も商売ですので、その問題を依頼人に最大の利益をもたらす形で解決しようとしてきます。もちろん依頼人の利益を上げることにより報酬をたくさん取れるという発想になるのは、当然のことだと思います。 だから弁護士は訴訟を避けようという行動を積極的にはしないかもしれません。

相手側も弁護士をつけてきて訴訟も構わないという体制になれば、こちらも弁護士をつけて戦っていくことになります。

そうなると、お互い弁護士費用がかかり、トラブルは泥沼化していきます。

訴訟を避けたいのであれば弁護士名による内容証明は避けるべきです。

 

 

 

②相手方に誠意があるとき

相手が経済的に困窮しているが、今できる範囲で精いっぱいの誠意をもって対応しているのであれば内容証明は逆効果です。

おカネがない人からはおカネが取れない

これは鉄則です。 下手に内容証明を送ることにより、関係が悪化し、誠意を見せて返済しようとしているのにその分割払いでさえも止まってしまうかもしれません。

相手側が誠意があるかどうかは、見た目だけで判断せずに、本当はどうなのか? 表面上だけの誠意なのかどうなのか?まで見極めて内容証明を送るべきか否かを考えるべきです。

 

 

③当方に非があるとき

内容証明は普通郵便と違い、相手に強い反発姿勢を示してしまいますので、こちら側に非があれば、確実にそこを逆手に攻めてくるはずです。いくら相手の方が悪いと思っていても、当方の非を責められてしまえば、反対に訴訟を起こされたり、それが刑事処罰の対象となるようなことであれば、刑事告訴や逮捕などにつながるおそれすらあります。

当方に非がある場合は、そのリスクも考慮したうえで内容証明を出すか出さないか判断しましょう。

 

④今後も親しく付き合いたいとき

内容証明を出された相手は、もう二度とあなたのことを親しい間柄をは思わない可能性が高いです。

些細なことで、口頭または普通郵便で言えばこじれなかった事を内容証明で出したがために、二度と取引をしないとか、今後一切の付き合いをやめることになりかねません。

今後も親しくしたい相手に内容証明を出すのはやめた方が良いでしょう。

 

⑤相手方が倒産しそうなとき

内容証明をみて、これはもう再建は不可能だと断念した場合、債権回収をするまえに、破産手続きに入ってしまう恐れがあります。

相手が倒産の危機にある場合は、攻撃的に攻めるのでなく、少しでも多く回収できるよう他の手段を考えた方がよいでしょう。

 

⑥相手方が財産隠蔽の恐れがあるとき

内容証明が贈られると、そのまま訴訟に発展し、最悪財産差し押さえになるのではいかと考えるケースがあります。

一度、検討のつかないような口座に資金を移されてしまうと、発見することはとても難しいです。

訴訟を起こして、判決を獲得しても、どこにあるかわからない資産は差し押さえができません。結局回収ができないという可能性もでてきますので、いきなり内容証明を送り付けるのは危険です。

このような場合は、仮差押えなどの裁判手続きを行い、金銭債権の失効を保全するために、債務者の財産の処分に制限を加える手続きをしたほうが良いと考えられます。

仮差押えが預貯金にされると預金口座はロックされ引き出しができなくなります。不動産の場合は、登記簿謄本に仮差押えの登記がされ、第三者に売却してもその効果が否定されることになります。

仮差押えで、財産隠しを予防したあとに、正式に訴訟を起こし、財産を回収する必要があります。

 

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